2015年11月21日 制定

序文

日本時間生物学会(以下、 本学会と略す)は時間生物学研究の推進をはかり、これを通じて 学術文化の発展と国民の福祉の向上に寄与することを目的とする。 本学会においても、研究の公正・公平さの維持、学会発表での透明性、かつ社会的信頼性を保持しつつ 産学連携による研究の適正な推進を図るために、COIマネジメントに関する適切な対応が求められる。 本指針は、 本学会と会員が本学会事業での発表などで利益相反状態にある企業・法人組織との経済的な 関係を一定要件のもとに開示させることにより、会員などの利益相反状態を適正にマネジメントし、 社会に対する説明責任を果たすために本学会の利益相反指針を策定したものである。

I.目的

人間を対象とする研究の倫理的原則については、すでに、「ヘルシンキ宣言」や「臨床研究の倫理指針」において述べられているが、 被験者の人権・生命を守り、安全に実施することに格別な配慮が求められる。
本学会は、その活動において社会的責任と高度な倫理性が要求されていることに鑑み、 「日本時間生物学会の利益相反(COI)に関する指針」(以下、本指針と略す)を策定する。 本指針の目的は、本学会が会員などの利益相反状態を適切にマネジメントすることにより、 研究成果の発表やそれらの普及・啓発などの活動を中立性と公明性を維持した状態で適正に推進させ、 社会的責務を果たすことにある。したがって、本指針では、会員などに対して利益相反についての基本的な考えを示し、 本学会の会員などが各種事業に参加し業務遂行・発表する場合、自らの利益相反状態を自己申告によって適切に開示し、 本指針を遵守することを求める。

II.対象者

利益相反状態が生じる可能性がある以下の対象者に対し、本指針が適用される。

(1)本学会会員
(2)本学会の学術大会などで発表する者
(3)本学会の役員(理事)、学術大会担当責任者(会長など)
(4)(1)~(3)の対象者の配偶者、一親等の親族、または収入・財産を共有する者

III.対象となる活動

本学会が行うすべての事業活動に対して本指針を適用する。
(1)学術講演会(年次学術大会含む)などの開催
(2)学会機関誌、学術図書などの発行
(3)研究および調査の実施
(4)研究の奨励および研究業績の表彰
(5)国際的な研究協力の推進
(6)その他目的を達成するために必要な事業

IV.申告すべき事項

対象者は、個人における以下の(1)~(9)の事項で、細則で定める基準を超える場合には、 その正確な状況を本学会理事長に申告するものとする。 なお、申告された内容の具体的な開示、公開の方法については別に細則で定める。
(1)企業・法人組織、営利を目的とする団体の役員、顧問職、社員などへの就任
(2)企業の株の保有
(3)企業・法人組織、営利を目的とする団体からの特許権などの使用料
(4)企業・法人組織、営利を目的とする団体から、会議の出席(発表)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)
(5)企業・法人組織、営利を目的とする団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料
(6)企業・法人組織、営利を目的とする団体が提供する研究費(治験、共同研究、受託研究など)
(7)企業・法人組織、営利を目的とする団体が提供する奨学(奨励)寄附金(研究助成金、寄付金など)
(8)企業・法人組織、営利を目的とする団体がスポンサーとなる寄付講座
(9)その他、上記以外の旅費(学会参加など)や贈答品などの受領

V.利益相反状態との関係で回避すべき事項

1.対象者の全てが回避すべきこと
研究の結果の公表やガイドラインの策定などは、純粋に科学的な根拠と判断、 あるいは公共の利益に基づいて行われるべきである。本学会の会員などは、 研究の結果とその解釈といった公表内容や、研究での科学的な根拠に基づく ガイドライン・マニュアルなどの作成について、その研究の資金提供者・ 企業の恣意的な意図に影響されてはならず、また影響を避けられないような 契約を資金提供者などと締結してはならない。

2.研究責任者が回避すべきこと
研究、特に臨床試験、治験などの計画・実施に決定権を持つ研究責任者には、 次の項目に関して重大な利益相反状態にない(依頼者との関係が少ない)と 社会的に評価される研究者が選出されるべきであり、また選出後もその状態を維持すべきである。
(1)研究を依頼する企業の株の保有
(2)研究の結果から得られる製品・技術の特許料・特許権などの獲得
(3)研究を依頼する企業や営利を目的とした団体の役員、理事、顧問など(無償の科学的な顧問は除く)
但し、(1)~(3)に該当する研究者であっても、当該研究を計画・実行するうえで必要不可欠の人材であり、 かつ当該研究が社会的に極めて重要な意義をもつような場合には、適正なマネジメントを受け、その判断と 措置の公平性、公正性および透明性が明確に担保されるかぎり、当該研究の研究責任者に就任することができる。

VI.実施方法

1.会員の責務

会員は研究成果を学術講演などで発表する場合、本学会の細則にしたがい、所定の書式で当該研究実施に関わる 利益相反状態を適切に開示するものとする。研究などの発表との関係で、本指針に反するとの指摘がなされた場合には、 理事会は利益相反を管轄する委員会(以下、利益相反委員会と略す)に審議を求め、その答申に基づき、妥当な措置方法を講ずる。

2.役員などの責務

本学会の役員(理事)、学術大会担当責任者(会長など)は本学会に関わるすべての事業活動に対して重要な 役割と責務を担っており、当該事業に関わる利益相反状態については、就任した時点で所定の書式にしたがい 自己申告を行なうものとする。また、就任後、新たに申告すべき利益相反状態が発生した場合には規定にしたがい、 修正申告を行うものとする。

3.利益相反委員会の役割

利益相反委員会は、本学会が行うすべての事業において、重大な利益相反状態が会員に生じた場合、 あるいは、利益相反の自己申告が不適切で疑義があると指摘された場合、当該会員の利益相反状態を マネジメントするためにヒアリングなどの調査を行い、その結果を理事長に答申する。

4.理事会の役割

理事会は、役員などが本学会の事業を遂行するうえで、重大な利益相反状態が生じた場合、 あるいは利益相反の自己申告が不適切であると認めた場合、利益相反委員会に諮問し、 答申に基づいて改善措置などを指示することができる。

5.学術講演会担当責任者の役割

学術大会の担当責任者(会長など)は、学会で研究の成果が発表される場合には、その実施が 本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する演題については発表を差し止めるなどの 措置を講ずることができる。この場合には、速やかに発表予定者に理由を付してその旨を通知する。 なお、これらの措置の際に発表の事前事後を含め上記担当責任者は利益相反委員会に諮問し、 その答申に基づいて改善措置などを指示することができる。

6.その他

その他の委員長・委員は、それぞれが関与する学会事業に関して、 その実施が本指針に沿ったものであることを検証し、本指針に反する事態が生じた場合には、 速やかに事態の改善策を検討する。なお、これらの対処については利益相反委員会に諮問し、 答申に基づいて委員長は改善措置などを指示することができる。

VII.細則の制定

本学会は、本指針を運用するために必要な細則を制定することができる。

VIII.指針の改正本

指針は、社会的要因や産学連携に関する法令の改正、整備ならびに医療および研究をめぐる諸条件に適合させるためには、定期的に見直しを行い、改正することができる。

IX.施行日

1.本指針は2015年11月21日より施行する。

補足

1. 利益相反委員会

利益相反委員会は、倫理委員会が兼任する

2. 利益相反の開示方法

学術大会などの口頭発表では、以下のスライドを発表の冒頭に示す。

様式1-A:開示すべき利益相反がない場合

様式1-B:開示すべき利益相反がある場合

ポスター発表では、本スライドと同様の内容を示すこととするが、書式・場所は特に定めない。

3. 細則

日本時間生物学会
「利益相反(COI)マネジメントに関する指針」の細則

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日本時間生物学会(以下、本学会と略す)は、「利益相反(COI)に関する指針」を策定し、本学会会員などの利益相反(COI)状態を公正にマネジメントするために、「利益相反に関する指針」の細則を次のとおり定める。

第1条(本学会学術大会などにおける COI 事項の申告)
第1項

会員、非会員の別を問わず発表者は本学会が主催する講演会(年次学術大会)、市民公開講座、などで研究に関する発表・講演を行う場合、筆頭発表者は、配偶者、一親等の親族、生計を共にする者も含めて、当該演題発表に関して、「臨床研究に関連する企業、法人組織や営利を目的とした団体」との経済的な関係について過去1年間における COI 状態の有無を、抄録登録時に様式1により自己申告しなければならない。

筆頭発表者は該当する COI 状態について、発表スライドの最初(または演題・発表者などを紹
介するスライドの次)に様式1−A または、様式1−B により開示するものとする。

第2項

前項に定める「研究に関連する企業・法人組織や、営利を目的とする団体」とは、研究に関し次の
ような関係をもった企業・組織や団体とする。

  1. 研究を依頼し、または、共同で行った関係(有償無償を問わない)
  2. 研究において評価される療法・薬剤、機器などに関連して特許権などの権利を共有している関係
  3. 研究において使用される薬剤・機材などを無償もしくは特に有利な価格で提供している関係
  4. 研究について研究助成(有形・無形を問わず)・寄付などをしている関係
  5. 研究において未承認の医薬品や医療器機などを提供している関係
  6. 寄付講座などのスポンサーとなっている関係
第2条(COI自己申告の基準について)

以下の各号に該当する場合は、該当者は当学会に対して COI 申告を行わなければならない。

  1. 研究に関連する企業・法人組織や営利を目的とした団体(以下、企業・組織や団体という)の役員、顧問職については、一つの企業・組織や団体からの報酬額が年間 100 万円以上の場合。
  2. 株式の保有については、一つの企業についての1年間の株式による利益(配当、売却益の総和)が 100 万円以上の場合、あるいは当該全株式の 5%以上を所有する場合。
  3. 企業・組織や団体からの特許権使用料については、一つの権利使用料が年間 100 万円以上の場合。
  4. 企業・組織や団体から、会議の出席(発表)に対し、研究者を拘束した時間・労力に対して支払われた日当(講演料など)については、一つの企業・団体からの年間の講演料が合計 50万円以上の場合。
  5. 企業・組織や団体がパンフレットなどの執筆に対して支払った原稿料については、一つの企業・組織や団体からの年間の原稿料が合計 50 万円以上の場合。
  6. 企業・組織や団体が提供する研究費(受託研究費、共同研究費など)については、一つの企業・団体から支払われた総額が年間 100 万円以上の場合。
  7. 企業・組織や団体が提供する奨学(奨励)寄付金については、一つの企業・組織や団体から、申告者個人または申告者が所属する部局(講座・分野)あるいは研究室の代表者に支払われた総額が年間 100 万円以上の場合。
  8. 企業・組織や団体が提供する寄付講座に申告者らが所属している場合。
  9. その他、研究とは直接無関係な旅行、贈答品などの提供については、一つの企業・組織や団体から受けた総額が年間 5 万円以上の場合。

但し、⑥、⑦については、筆頭発表者個人か、筆頭発表者が所属する部局(講座、分野)あるいは研究室などへ、研究成果の発表に関連し、開示すべき COI 関係にある企業や団体などからの研究経費、奨学寄付金などの提供があった場合には、それらの金額に加えて申告することを要する。

第3条(役員などの COI 申告書の提出)
第1項

本学会の役員(理事)、次期学術大会の会長・本学会の事務局長は、就任時の前年度1年間における COI 状態がある場合は様式2にしたがい、新就任時、及び就任後は1年度ごとに、理事会へ提出しなければならない。但し、これらの者が行う COI の自己申告は、本学会が行う事業に関連する企業・法人組織、営利を目的とする団体に関わるものに限る。

第2項

(1) 様式2 にしたがい記載する COI 状態についての自己申告書は、「利益相反(COI)に関する指針」のⅣ.申告すべき事項で定められたものと合致しなければならない。

(2) 各々の開示・公開すべき事項について、自己申告が必要な金額は、第 2 条で規定された基準額とし、様式2にしたがい、項目ごとに金額区分を明記する。

(3) 様式2 は就任時の前年度1年分を記入し、その算出期間を明示する。但し、役員などは、在任中に新たな COI 状態が発生した場合には、8 週以内に様式2を以て報告する義務を負うものとする。

第4条(COI自己申告書の取り扱い)

学会発表のための抄録登録時に提出される COI 自己申告書は提出の日から3年間、理事長の監督下に本学会事務所で厳重に保管されなければならない。同様に、役員の任期を終了した者に関する COI 情報の書類なども、最終の任期満了の日から3年間、理事長の監督下に本学会事務所で厳重に保管されなければならない。3年間の期間を経過した者については、理事長の監督下において速やかに削除・廃棄される。但し、削除・廃棄することが適当でないと理事会が認めた場合には、必要な期間を定めて当該申告者の COI 情報の削除・廃棄を保留できるものとする。

第5条(細則の変更)

本細則は,社会的要因や産学連携に関する法令の改変などから、個々の事例によって一部に変更が必要となることが予想される。利益相反委員会は、本細則の見直しのための審議を行い、理事会の決議を経て、変更することができる。

附則

第 1 条(施行期日)

本細則は、2015 年 11 月 21 日より施行する。

第2条(本細則の改正)

本細則は、社会的要因や産学連携に関する法令の改正、整備ならびに医療および臨床研究をめぐる諸条件の変化に適合させるために、原則として、数年ごとに見直しを行うこととする。

第3条(役員などへの適用に関する特則)

本細則施行のときに既に本学会役員などに就任している者については、本細則を準用して速やかに既申告の変更の有無について報告などを行わせるものとする。