会長からのご挨拶(1995年)
千葉喜彦(山口大学・理学部)
時間生物学は、時間の関数として変化する生命現象のうち、とくに周期性を扱う学問分野で、研究の中心は、環境の側に割符をもつ周期現象(circa-rhythm)にある。circa-rhythmが、homeostasisとともに生命の本質的側面であることが広く認識されるようになったのは1960年前後で、その象徴的できごととしてCold Spring Harbor Symposiumでbiological clockをテーマとしてとりあげたことがあげられる。
このころすでに、circadian rhythmについていうならば、同調性、温度補償性などの基本的性質の多くはわかっていて、趨勢は当然pacemakerの所在あるいはoscillationの機構解明に向かっていた。と同時に注目すべきは、circa-rhythmの重要性に対する認識が医学、心理学などの分野で急速に高まっていったことである。
このような動きが我が国でもはっきり感じられるようになったのは1970年半ばころであった。爾来20年、別々に活動を続けてきた生物リズム研究会、臨床時間生物学研究会などが今回一つに融合して日本時間生物学会が成立したことはまことに喜ばしい。ここに至るまで力を尽くしてくださった先達ならびに阿研究会の会員各位に心から謝意を表したい。
時間生物学の課題は、生命科学はもとより自然科学の諸分野の研究者を糾合してはじめて解明されるものである。また、生物の構造段階でいうならば、研究の対象は共同体、個体群から分子レベルまで及ぶ。日本時間生物学会が真の学際集団として発展し、世界の生物振動研究に貢献していくことを期待している。
生物リズム研究会の会長就任にあたって(1993年)
千葉喜彦(山口大学・理学部)
生物リズム研究会は今年で10年目に入ります。この研究会は放高木健太郎先生のご尽力で設立され、代表者と初代会長であられた川村浩先生、事務局の川崎晃一先生、上園慶子先生のご努力によって維持運営されてきました。
昨年東京で聞かれた総会で、新しい規則のもとで私が3年間会長を務めることになりましたが、ご挨拶を申し上げるまえに、まず、上の方々に心から感謝いたします。
共同体(群集)から細胞までの構造段階に普遍的な自律振動は、生命科学の基礎分野のなかで広く注目されています。また、振動の形を直接とらなくても、機構の中心部分に振動が存在する可能性が議論されている生命現象もあります。一方、自律振動研究の応用的な意義に対する認識も急速に高まりつつあります。私はこの広がりを大事にして、研究会の発展につなげたいと思います。
自律振動の問題を時間の問題としてみると、またそこに、別の広がりが見いだせます。時間は発生生物学あるいは老年学の問題でもあります。場合によっては、こういった分野にまで目を向けるのも大事かもしれません。
とまれ、さしあたって私は、研究会を基礎、応用を問わず、自律振動に関心を持つ人達のものにすべきだと考えています。研究会も10年、新しい段階を迎えるにあたって、日頃考えてきたことを述べてみましたが、これが刺激になって、研究会の将来すなわち学問の展望に関して会員各位の間で活発な討議がなされることを期待いたします。
今年は年次集会が、中島秀明先生のお世話で岡山で開かれます。私はこれを、新しい段階の出発点にしたいと思います。できるだけ多くの方が出席して、研究の成果を交換し合い、また会の将来について語り合うことができるような集まりになることを望んでいます。
