日本時間生物学会

【書評】 体内時計の謎に迫る ~体を守る生体のリズム~    大塚 邦明 (著)

体内時計の謎に迫る ~体を守る生体のリズム~

大塚 邦明 (著)
 256頁|定価1,580円
発行:技術評論社|初版:2012年2月
ISBN 978-4-7741-4991-2

体内時計の仕組みや役割を紹介する一般書は、本学会会員の著書も含め、これまで多数出版されてきたが、 本書は従来の本にはない新鮮な視点が、たくさん盛り込まれており、とても楽しく読むことができる。 著者は循環器内科医であり、心臓の鼓動という秒単位のリズムと、それよりさらに長い時間単位での変動解析の専門家である。1章の導入に続き、 2章では、1日の各時間帯の中で起きやすい疾患の病理的基盤が詳細に述べられる。 時間帯ごとに、これだけ詳しくまとまった説明は他書では見たことがなく、また、この章を読むことで、疾患発生の日内変動の概要のみならず、 その基盤となる循環器疾患の病態生理が、クリアにまとまって理解できるという副産物的成果も得られる。 5章、6章では、最新の時計遺伝子ノックアウトマウスの研究結果などの紹介から、時間医学の成果の実践法まで、臨床医としての視点が述べられる。 そして、何よりも本書の圧巻は4章の「時間構造とクロノミクス」で、科学的には、まだ、ほとんど解明されていない 週単位、月単位、年単位、あるいは1.3年単位といった、概日周期以外の種々の周期の生物リズムに着目して解説している。現時点では、どこまでリズムと呼んで良いのかわからないような周期のリズムもあるし、 太陽の活動周期との一致などの大胆な仮説もある。 しかし、それら全てを自分自身の研究に基づくデータの解析や、文献を参照して、あくまでも科学的に追究する姿勢には、躍動感があふれ、 科学者としての知的好奇心の原点が感じられて、本当にエキサイティングである。 時間生物学の専門家にこそ、読んで欲しい本だと思う。

(文責:熊本大学・粂 和彦)


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