奨励賞受賞者が決定しました!

第22回(2024年度)の日本時間生物学会奨励賞受賞者が決定しました。おめでとうございます!
今後益々のご活躍を期待しています。

【基礎科学部門】
 氏名:三宅 崇仁 氏
 所属:京都大学大学院 薬学研究科
 研究題目:概日体温リズムによる転写によらない生物時計調律機構の解明

受賞理由
三宅崇仁氏は、体温の微小変化が哺乳類の概日時計に与える影響に関して、分子レベルで緻密な解析を行いました。その結果、特にPer2タンパク質の翻訳に与える影響に関して、温度上昇時にリボソームが集積して翻訳を増加させるminimal upstream ORF (m-uORF)を、 Per2 mRNAの5’ UTRに同定しました。さらに、個体レベルでもPer2 m-uORFの影響を評価し、皮膚ホメオスタシスに重要であることを示しました。これらは、概日システムと温度の関係という古典的かつ時間生物学の王道を行くテーマでありながら、従来の認識を刷新する新たなメカニズムの発見を含む独創性の高い重要な研究として高く評価されました。さらに、これらの知見をもとに、(従来分子レベルでの解析の難しかった)概日リズムのパラメトリック同調の解明を見据えて、脳体温制御中枢を人為操作するための新たな化学遺伝学ツールを開発していることから、今後の発展が大いに期待されると評価されました。

【臨床・社会部門】
 氏名:吉田 優哉 氏
 所属:九州大学大学院 薬学研究院
 研究題目:時間薬理学的解析を基盤とした新たな臓器連関機構の発見と治療法開発に関するトランスレーショナルリサーチ

受賞理由
吉田氏は、これまで一貫して時間生物学的視点から慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の合併症に関する病態解析を行ってきました。CKDモデルマウスにおいて、腎臓で発現が上昇するTGF-β1による腎-肝連関、肝臓で代謝不全が生じるレチノールによる肝-腎連関を組み合わせて、腎-肝-腎連関が腎障害時には生じていること、その過程にDBP やCLOCK などの時計遺伝子が関与していることを明らかにしました。さらに、マウスで明らかにした機序はCKD 患者の単球機能や心臓病態とも関連していることを示しました。CKDの病態解析や新たな治療法について、時間生物学的視点から、新たな腎臓の炎症や線維化、肝臓の薬物代謝機能の低下機構や心臓の炎症機構を明らかにし、これらの分子機構を基盤に創薬標的を発見しました。これら一連の病態機構は、CKD のみならず他の慢性炎症性の疾患においても応用可能であり、多岐にわたる医療貢献が期待できます。このように、複数の時間薬理学研究を通して、当分野の発展と臨床応用に貢献したことが高く評価されました。今後一層、時間生物学、臨床薬理学、構造生物学など様々な視点から、臨床現場への社会実装を目指した研究を担っていかれるものと期待されます。