1996年11月14日並びに15日の両日にわたり甲府市総合市民会館を会場として大会を開催した。本会の主題として“時計遺伝子から時間治療まで”を選んでみたが幸い好天に恵まれ大会参加者はこれまでの会を上まわって総計300名の盛会であった。学会の演題の内で最も重要な一般演題は全部で83題であり口演(口演5分、討論5分)とポスター提示とを併せて行ってもらった。その意図するところは全会員が全演題について知り、且つ討論に参加できる様に配慮した事にあった。この目論見は当たって学術交流 が盛んに行われたのは主催者としては嬉しい事だった。一般演題は主題に選んだ如く時計遺伝子に代表される基礎科学的演題から時間治療に代表される臨床的講演まで幅広い分野の発表がなされた。
パネルディスカッションとして“時間生物学を如何に発展させるか?”が司会の千葉喜彦(山口大)並びに川崎晃一(九大)により行われた。第3回大会ともなれば本会の現状とそれを踏まえた将来への展望を語りあう事が大切と思ったからである。パネリストとしては中島秀明(岡山大)、本間研一(北大)、川村 浩(東亜大)、Smolensky, MH (Texas-Houston Univ.,U.S.A.)の4人であった。各パネリストは基本的に以下の項目について論じ合った。1)時間生物学の定義、2)自身の研究の位置付け、3)自身並びに関連分野での研究方法とその成果、4)広く認知されている研究成果、研究発表の場、国内外の研究団体の情報、5)今後の問題点等であった。時間生物学は新しい学問なので各演者の学問的背景並びに研究に差異があることが明らかとなった。その事がむしろ今後の本学会の末広がりの発展の展望を聴衆に与えて本パネルの意図は果たされたと思っている。
特別講演はMichael H. Smolensky, Director, Hermann Chronobiology Center, Professor of University of Texas-Houston, School of Public Health によるMedical Chronobiology and Chronotherapeutics in 1996 and beyond と題する講演であった。時間生物学の特に臨床的研究の纏めは同じ方向性を求めている医師には極めて有用であった。彼の本学会への貢献に深謝している。
シンポジウムは“時間遺伝子から時間治療まで”と題して高橋清久(国立精神神経センター)と劒 邦男(山梨医大)の司会で行った。時計遺伝子の転写制御、石田直理雄(通産省生命工学工業技術研究所)、視交叉上核の分子学、篠原一之(横浜市大)、勤務交代とリズム、本橋 豊(秋田大)、睡眠異常とリズム、石束嘉和(山梨医大)、高血圧の時間治療、井尻 裕(山梨医大)の発表があった。何れの発表も本学会の主題にふさわしい幅広く且つ奥深い内容であり時間生物学に関連する学際的研究を総括するシンポであった。
学会員は学会場で又懇親会を通して交流をし最後まで熱心に討議された。このようなお膳立てが出来ていささかなりとも本学会の発展に貢献出来たことを学会を主催した我々一同光栄に思っている。明年の早稲田大学での再会の折りにはまた一段と進んだ研究に出会える事を楽しみにしている。
編責:
吉田尚生@北大・地球環境
(1997/02/11)